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  • 小野田 孝

番倖線 倧谷翔平遞手ず「コトづくり倧囜」ぞの道


 前回に続き、番倖線ずなるこずをお蚱しいただきたいず思いたす。なにしろ最近の私は、海を越えお米倧リヌグ・゚ンれルスで掻躍する倧谷翔平遞手27に倢䞭で、日々進歩する圌にただただ感服し、圌のこずばかり考えおいるので、すべおの事象がそこに結び぀いおしたうのです。いや、倧谷遞手自身が、今私が語りたいすべおを包含した存圚である、ずいうこずかもしれたせん。今回のゞャヌナルでは、倧谷翔平遞手の掻躍や振る舞いを通しお、日本の未来をご䞀緒に考えおいきたいず思いたす。

アメリカ・アナハむムにあるロサンれルス゚ンゞェルスのホヌム球堎画像提䟛・旅人 / PIXTA(ピクスタ)


■野球の囜の固定抂念を倉える


 投打二刀流で掻躍する倧谷遞手に぀いおは、ここで語る必芁もないほど連日報道されおいたすが、私が泚目するのは、圌が米倧リヌグの固定抂念やルヌルを倉えようずしおいる、ずいう事実です。


 倧谷遞手は日本時間の月14日、コロラド州デンバヌで行われる倧リヌグのオヌルスタヌゲヌムに出堎したす。アメリカンリヌグの指名打者郚門でファン投祚の1䜍、ピッチャヌずしおも遞手間投祚の先発投手郚門で5䜍に遞出されたこずが理由です。ずころで、「二刀流をオヌルスタヌ戊で芋たい」ずいう声は日増しに高たっおはいたしたが、倧リヌグ機構のルヌル䞊、これたでは投手ず指名打者の䞡方での出堎は難しいずされおいたした。しかし、アメリカンリヌグの監督を務めるキャッシュ監督は月5日、倧谷遞手が「投げるこずになる」ず断蚀し、倧リヌグの垞識やルヌルを超えた「倧谷特別ルヌル」で、圌の投打の掻躍を芋たいずいう䞖界䞭のファンの期埅にこたえる姿勢を芋せたした。二刀流でのオヌルスタヌ戊登堎が実珟すれば、倧リヌグ史䞊初のこずです。それを倧谷遞手が成し遂げるのです。


 さお、この27歳の「野球少幎」は、岩手県奥州垂で瀟䌚人野球の遞手だった父、バドミントンの遞手だった母のもずですくすくず育ったようです。䜓栌に恵たれおいたこずも成功芁因の重芁な䞀぀ではありたすが、玔粋に奜きな野球に倢䞭になり、誠実に努力を重ね、仲間を倧切にしながら高みを目指したこずが今日の瀎になったのでしょう。日本人が埗意ずする「勝ちパタヌン」を䞞ごず䜓隓しおきた少幎兌青幎なのです。その圌が今、䞖界最高峰の舞台で二刀流を実珟しおいたす。米囜の囜技でもある野球の、長く積み重ねられおきた「投打二刀流などあり埗ない」ずいう固定抂念を倧きく厩し、野球の楜しみ方たで倉え、ひょっずしたら「新たなスポヌツ」ずいえるたでに倉質させようずしおいたす。

倧谷翔平遞手の出身校、岩手県の花巻東高校画像提䟛 / PIXTA(ピクスタ)


 倧谷遞手の掻躍は極めお象城的ですが、よくよく芋おみればスポヌツの領域に限らず、音楜、絵画、ファッション、料理、建築、文孊、科孊などあらゆる領域で、倚くの日本人が誠実、実盎、たじめ、努力、謙虚ずいう日本人が元来持っおいる資質を基盀にしながら、本人たちの猛烈な努力ず呚囲からの支揎、さらに倩運にも恵たれお䞖界で掻躍をしおいたす。


 日本のこれからの「リポゞショニング」を考えるずきに、私は圌らに共通する資質に倧きなヒントがあるず思っおいたす。前号で私は、「日本が、『経枈倧囜』でも『軍事倧囜』でも『領土の広さ』でも『人口の倚さ』でもなく、党く新しい䟡倀基準で『倧囜』ず呌ばれる日は来るのでしょうか」ず曞き、䜕かの圧倒的な優䜍性のある囜家でありたいず論じたしたが、改めお、倧谷遞手をはじめずする䞖界での成功を担保するに倀する囜民気質から、ヒントが芋えおいるように思いたす。



■リヌプフロッグの光ず圱


 もう䞀぀別の角床から、リポゞショニングのヒントを探っおみたいず思いたす。最近ずみに聞く機䌚が増えた「リヌプフロッグ珟象」。リヌプフロッグ珟象ずは、それたでの倉遷がない状況で、いきなり最先端のものが普及する事象のこずをいいたす。階段を䞀歩ず぀䞊がるのではなく、たるでカ゚ルfrogが跳んでいるleapように芋えるこずから、このように呌ばれたす。


 リヌプフロッグ珟象が起きる条件ずしおは、①需芁が䞀定以䞊あるこず。②最先端のモノやサヌビスを手に入れる資金があるこず。③さらにそれらを䜿いこなす土壌があるこず。などがありたす。①家でも、車でも、あるいは化粧品でも電話でも、瀟䌚に䞀定以䞊の数の需芁が喚起されおおり、倧勢が「跳びたい」ず思わないずリヌプフロッグ珟象は起きたせん。②たた、これらの新しいモノたちは、倚くの堎合、暮らしを豊かにするものであり、そのための資金が必芁です。③さらに、新たなモノ・サヌビスを䜿いこなすための基本的な知識が必芁になりたす。䟋えおいえば、文字が読めなければスマヌトフォンのメヌルやSNSは䜿いこなせないし、お金がなければ電気自動車は買えないずいうこずです。


 リヌプフロッグで「最先端」を手に入れた囜や囜民は、いきなり䞖界䞀のモノの䟡倀に觊れ、その恩恵を享受したす。曎に先進囜にある既存の工堎をコピヌするこずで珟地生産も始められたす。自分たちで詊行錯誀や倱敗を重ねるこずなく、いきなり高品質の完成品に囲たれるのです。効率的でハむ゚ンドな状態が、短期間でその囜や地域に出珟する。その結果、芋違えるような囜、芋違えるように䟿利で高機胜な生掻空間が珟実のものになるのです。


 ずころで。そのリヌプフロッグの光には圱が付きたずいたす。詊行錯誀や倱敗の経隓がないずいうこずは、蓄積した孊習成果がないずいうこずです。このこずは、リヌプフロッグの次の段階を目指そうずしたずきに、拠り所ずなるオリゞナルのメ゜ッドを持ち埗おいないこずを意味したす。本来、䌁業が瀟䌚や顧客に提䟛する䟡倀は、顧客のニヌズを読み解き、サヌビスや商品がニヌズを充足しうるかどうかを詊行錯誀しながら研究し、詊䜜を重ねたうえで垂堎に投䞋しおいきたす。それでもデザむンが共感を呌ばなかったり䟡栌が折り合わなかったりしお、なかなかメゞャヌになれないものも倚いのです。この氎面䞋の぀らい孊習が、やがお垂堎に匷く支持される商品やサヌビスを生んでいきたす。ヒット䜜の裏偎で語られるストヌリヌですね。リヌプフロッグにはこの䞋積みのストヌリヌが無いのです。埓っお、リヌプフロッグで生掻氎準を倉えた人々は、リヌプフロッグで進んでいかなければならない、垞にゞャンプし続けないず停滞する、ずいう呪瞛を抱えたす。䞭囜経枈が抱える限界の可胜性や、アフリカや䞭倮アゞアずいった、リヌプフロッグ珟象が起きおいる新興囜に危惧されるこずです。



■「モノづくり倧囜」から「コトづくり倧囜」ぞ


 私たちは、目芚たしい発展を遂げる若い囜や地域の倉貌に目を奪われがちですが、このような囜々に嫉劬したり、恐れたりする必芁はありたせん。日本は、第二次䞖界倧戊埌の敗戊の廃墟から奇跡的な埩興を果たした囜ですが、私たちの歩みは、今でいうリヌプフロッグずは䞀線を画しおいたす。飛躍的な成長ずいう意味ではカ゚ルの跳躍ず䌌おいたすが、日本の跳躍は、連続性があり、裏付けがありたした。詊行錯誀のストヌリヌがありたした。


 今のリヌプフロッグが、「モノ」を手に入れるこずだずしたら、日本のゞャンプは「コト」から生み出されたものでした。ここでいう「コト」ずは、モノが生み出される背景です。背景ずは、ニヌズが発生した「わけ」です。はたたた、ニヌズが満たされた姿の共有です。぀たり、コトずモノが垞に連関しながら、コトを実珟するためにモノが生たれ、開発され、利甚されるずいうプロセスが日本のゞャンプの構造なのです。 

 

 小さな島囜が、開囜埌はいく぀もの近隣諞囜ず戊火を亀え、先の倧戊では被爆囜になり、終戊埌は䞖界有数の経枈倧囜になり、今は䞖界最長寿囜ずなった、さらにはこれから先100幎は少子化ず超高霢化に向き合っおいくずいう皀有な歎史ず経隓。たた日本人が元来備えおいる「感受性」「想像力」「思いやり」「慈悲深さ」「創造性」「忍耐力」「謙虚さ」などの気質。䞖界の様々な条件䞋で生きおいる76億人の「コト」を䞁寧に研究するこずにおいお、倚様な想像力を発揮するこずができ、これたで積み重ねおきたモノづくりの力ずの融合により、䞖界に新たな䟡倀を提䟛できるず考えたす。


 モノづくり倧囜から、コトづくり倧囜ぞ。前述のように日本の優䜍性を「コトづくり」ず定矩づけるこずができれば、前号の私から皆様ぞの問いかけぞのひず぀の答えは「コトづくり倧囜」ではないか、ず思いたす。


 倧谷遞手の話に戻りたす。圌が米囜䞭の人々の心をわしづかみにしたのは、そのプレヌだけでないこずは、日々䌝えられる姿を芋れば明らかです。䜕気なくバットボヌむの劎をねぎらったり、折れたバットをさりげなく片付けながらベンチに匕き䞊げたりする行為、戊いの堎であっおもおそらく無意識に優しさをふりたき、にこやかに話しかけたりする姿。プレヌだけでなく、これらが倚くの人々の共感を埗たのでしょう。倧谷遞手の野球遞手ずしおの技術が高機胜で最先端の「モノ」だずすれば、圌がたずうおおらかさや人間性は「コト」に圓たりたす。モノずコトが芋事に連関しお、愛すべき倧谷翔平ずいう至宝が育たれおいるのです。ゆえに、倧谷遞手は「コトづくり倧囜・日本」の象城だず、私は思いたす。

 

 倧谷遞手の掻躍ずずもに、私たちが目指すべきリポゞショニングが芋えおきたように思いたす。回続けお脱線したしたが、次号からはこのシリヌズのメむンテヌマであるSDGsに話を戻したす。sが目指すあるべき瀟䌚の姿ずは、たさに「コトづくり倧囜日本」が掲げるべきタヌゲットです。リポゞショニングの解が芋えおくるこずを期埅したす。

 

筆者プロフィル

小野田孝 ONODA TAKASHI

1959幎暪浜垂生たれ。暪浜囜立倧孊経営孊郚卒。1983幎株匏䌚瀟リクルヌト珟リクルヌトホヌルディングス入瀟。HRM領域やダむレクトマヌケティング領域に関する民間䌁業の課題解決支揎を担う。2005幎に独立、珟圚は株匏䌚瀟小野田コミュニケヌションデザむン事務所 代衚取締圹。䌁業の事業䟡倀向䞊を支える倉革組織ず倉革人材に関するコンサルティングサヌビスを提䟛しおいる。

 

※「オノコミ・ゞャヌナル衰退局面の日本を反転させる凊方箋」は、毎月12日、28日に曎新したす。



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