• 小野田 孝

2100年、リサイズにっぽん ~人口減少時代の新芽の息吹~②

最終更新: 2月12日

15歳の君たちへ。未来を思い、ワクワクしよう(上)


 株式会社小野田コミュニケーションデザイン事務所の小野田孝です。

 私は経済学者や評論家ではありません。1983年より(株)リクルートという類いまれな変革気質に富んだ壮大なビジネススクール型企業に21年間在籍し、その経験を基盤に2005年に独立。以来15年間、顧客企業の組織と働く人の変革を通じた事業支援を続けている、現場たたき上げの「かかりつけ医型コンサルタント」です。

 前回から、ジャーナルの新しいシリーズとして「2100年、リサイズにっぽん~人口減少時代の新芽の息吹」をお送りしています。

 シリーズ第2回の今回は、現在のティーンエイジャーが主役です。10代から20代の若者たちは、どんな未来を体験するのかを予想しました。2021年に15歳だった4人の男女が、2060年54歳の時に同窓会を開くというストーリー仕立てにしてみました。個性的な人生を歩む4人の言葉に耳を傾けてみてください。



●2060年とは?


 2060年、この同窓会が行われているときの世界の様子をみてみましょう。国連が発表している「世界人口推計」などによると、2060年の世界の人口は100億人を超えて101億5,145万人になっています。2021年現在は約78億人とされていますので、世界全体では約40年間で22億人ほど増加します。

 日本の人口は。総務省の国勢調査に基づく推計によると、2060年の日本の人口は8,674万人。2021年現在の1億2,500万人から減少を続け、2050年には1億人を割り込むとの予測です。また、全人口に占める65歳以上の割合は約39.9%に、75歳以上は26.9%に達し、国民の4人に1人が75歳以上という超高齢化社会になっています=左図

 日本の経済規模は。世界のGDPに占める日本の割合は、1980年には9.8%だったものが、1995年には17.6%まで高まり、その後2010年には8.5%に縮小しました。内閣府は「選択する未来」という報告書の中で、「国際機関の予測によれば、2020年には5.3%、2040年には3.8%、2060年には3.2%まで世界のGDPに占めるシェアが低下する」と、しています。また、日本経済研究センターの「2060年経済予測」によると、日本は人口減に加え生産性も伸び悩み、経済規模では現在の世界3位から2060年には、米、中、インド、ドイツに次ぐ5位になる、としています。

 いずれの予測値も日本の「縮小」を示しています。しかし、この4人が同窓会で語るそれぞれの半生は、前回のジャーナルで示したように「知恵と時間のエネルギーをもって全く別の世界を作り上げる」喜びに満ちたものであったようです。賑やかなやり取りの続きを聞いてみましょう。


●世界を舞台に~一億総活躍社会はどこにある?



 2015年10月に発足した第3次安倍改造内閣の中心プランとして打ち出されたのが「一億総活躍社会」でした。「若者も高齢者も、女性も男性も、障害や難病のある方々も、一度失敗を経験した人も、みんなが包摂され活躍できる社会」と、定義されています。

 さくらさんのような専業主婦層や、人口区分では生産年齢人口には含まれない65歳以上の人々の再投入や継続雇用が打ち出されたのです。平たくいえば「みんな、働いてくれ」ということでした。が、現実的には就業希望者の条件と市場とのマッチングが進まず、描いたような一億総活躍が実現しないまま歳月は過ぎています。

 しかし海外に目を転じると、多様な就業機会があります。たくさんの日本人が世界の各所で力を発揮しており、幅広い知見をもった日本人たちが世界に貢献しています。

 政府の政策意図では、「一億総活躍社会」は日本の中に閉じることが前提ですが、就業希望者側に軸を置けば、労働市場は世界に広がり、多様な選択肢が見えてくるのです。

 さくらさんが社会人大学で勉強を再開したのは42歳。リカレント教育 が可能なのは、基礎教育が確立され、真面目に学ぶ意義を幼いころから教えられた日本の教育文化ゆえである、といえるでしょう。さくらさんのように、恒常的な日常生活を自己の鏡にして「何もできない」と思い込んでいても 、学ぶうちに自分の生来の志と可能性に気づき、日本のみならず世界にまで活躍の場を求める人たちが増える可能性があります。何歳になっても「学ぼう」とする気持ちが、「社会に必要とされていると感じられる自己肯定感」へとつながるのです。


●モノからコトへ~揺るぎない付加価値とは?


 経済がグローバル化するにつれ、産業のあり方は大きく変わってきました。戦後の日本が得意としてきたのは、翔太さんが話しているように、工業製品に代表される「ものづくり」でした。しかしすでに世界では「メードインジャパン」が万能のブランドイクイティーではなくなりました

 オノコミジャーナルでお話してきましたように、工業製品の付加価値を高めることは、経済発展にとっては必須です。しかし工業製品の付加価値は、価値を生み出す源泉に独自性がない限り、安易に模倣されやすく、競争優位性を担保しにくい時代になりました。人も技術も情報も簡単に国境を越える時代においては、素晴らしい製品が世に出た途端、あっという間にまねをされ、それぞれが市場の求める規格や価格に合った製品として、変質してしまうのです。

 グローバル時代における、骨太で揺るがない付加価値とは何でしょうか。同窓会の会話で、有機野菜ビジネスに取り組む七海さんは言っています。「私はただ野菜を作っているんじゃない。コンセプトとか習慣とかこだわりとか、目に見えない価値を提供している」と。七海さんの取り組みは、一次産業である農業に、二次産業の食品加工・製造、さらに三次産業の流通販売までを一貫したコンセプトのもとで形成する「六次産業化」です。七海さんはこれを「新たな価値創造のモデル」と言っています。

 提供価値の在り様が「モノからコトへ」とシフトしたということです。モノが生産される背景や過程、モノによって得られる感動や経験を「コト」と呼ぶのだとすれば、より価値の高い「コト」を提案する企業が、高付加価値企業として市場に歓迎され続けるのだとの示唆です。


 個性豊かな人生を歩む4人には、語り尽くせない思いがあるようです。予想外に話がはずんでしまったので、大地さんと翔太さんの半生については次回のジャーナルでお届けします。

 2060年、あなたやあなたの家族は何歳ですか。そのとき、どんな社会でどんな生き方をしていたい、あるいはしていて欲しいと願いますか。4人の会話をヒントに考えてみてください。(この項続く)


(おまけ)仮想同窓会の4人の半生はこんな感じです。次回、翔太さんと大地さんのストーリーもお楽しみに!


※「オノコミ・ジャーナル~衰退局面の日本を反転させる処方箋」は、毎月12日、28日に更新します。



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