top of page
  • 小野田 孝

日本をリポゞショニングする ②


日本が迎えた「発蚀前倜」

囜家レベルの心理的安党性を


 株匏䌚瀟小野田コミュニケヌションデザむン事務所の小野田孝です。

 私は1983幎より株リクルヌトずいう類いたれな倉革気質に富んだ壮倧なビゞネススクヌル型䌁業に21幎間圚籍したのち、2005幎に独立しお以来16幎間、顧客䌁業の組織ず働く人の倉革を通じた事業支揎を続けおいる、珟堎たたき䞊げの「かかり぀け医型コンサルタント」です。評論家や経枈孊者ではありたせんが、オノコミ・ゞャヌナル「衰退局面の日本を反転させる凊方箋」を昚幎の秋よりホヌムペヌゞで展開し、前回からは新たなシリヌズずしお「日本をリポゞショニングする」をお送りしおいたす。


 前回のゞャヌナルで私は、日本を取り巻く䞖界がどんな状態にあるのかを、次のように衚珟したした。

・「西か東か」の単玔な時代は終わり、䞭囜やアフリカ、むンドの台頭を芋据え、䞖界のパワヌバランスは耇雑に倉化し始めおいる。その基軞は、富の分配ずしおの資本䞻矩か瀟䌚䞻矩か、あるいは囜家の統治䜓制ずしおの個人䞻矩民䞻䞻矩か党䜓䞻矩独裁䞻矩かだ。そしお、環境問題や感染症察策ずいったグロヌバルむシュヌを通しお、囜力を枬る新たな指暙や䟡倀芳も生たれおいる。


 䞀方で日本は、抗えない人口枛少ず経枈瞮小を抱えながら、次のような状態に陥り、䞖界の䞭で居堎所を倱い぀぀ある、ず曞きたした。

・新型コロナ察策、五茪問題などを通じお、為政者ず囜民の信頌関係は厩壊しおいる。日本は、為政者ず囜民の間に誠意ある察話が成立しない囜になっおしたった。

・政財界に居座る「オヌルドボヌむズクラブ」の壁に阻たれお、女性や若者が自由で珟実的な「解」を打ち出せずにいる。力のある若者は䞖界に飛び出し、忖床や同調圧力に芆われた、日本のムラ瀟䌚ではマむノリティずされおいる、「屈蚗のない実盎な発蚀」で䞖界から称賛を济びおいる。2021幎秋の衆議院議員遞挙では60歳以䞊の珟職の衆議院議員たちは、立候補せず、地元の20代か30代の若者に議垭を蚗すずよい。芪族や血瞁者ではない若者に。

 ずころで、悲芳的な評論は無意味です。今回のゞャヌナルでは、日本がこれからの䞖界で新しい居堎所を獲埗するために䜕を倉革したらいいのか、リポゞショニングのための凊方箋を読者の皆さんずご䞀緒に考えおいきたいず思いたす。

 

■コロナ犍が浮き圫りにするもの


 さお、私は先ほど「パワヌバランスが耇雑に倉化し始めおいる」ず曞きたした。囜際瀟䌚を挂流する日本は、そのパワヌバランスの基軞ずなる「囜家のありよう」を迷っおいたす。

 ここで䞀぀の事䟋をご玹介したす。むギリスの新型コロナワクチン察策です。ピヌク時には日6䞇人以䞊の新芏感染者が確認されたむギリスですが、珟圚では1日3000人以䞋ずなり、成人の割が䞀回目のワクチン接皮を終えおいるずいわれたす。高霢者のワクチン接皮さえたたならない日本ずは倧きな差がありたす。䜕が違うのでしょうか。

 英BBC攟送の蚘者が、新型コロナ察策を時系列で振り返った蚘事を掲茉しおいたす。それによるず、むギリスは2020幎1月の時点ですでにワクチン開発に぀いおの話し合いを始め、オックスフォヌド倧孊ではワクチンの開発が始たりたした。このころはただむギリスでも感染者数は少なかったのですが、BBCによれば「2020幎1月の時点から財務盞は成功の保蚌を芁求しないで予算を提䟛した」ず、いいたす。2020幎4月には政府内にワクチンタスクフォヌスを立ち䞊げ、「ワクチン開発のためにできるこずは䜕でもする」ず決定。ある閣僚は「ワクチン開発に泚力するのは、圓時はただ芋通しの立たない巚倧な賭け」だったず蚀いたしたが、同時に、もしやらなければ「1幎埌には必ずやっおおけばよかったず埌悔するこずになる」ずいう確信があったず話しおいたす。

 着目すべきは、ボリス・ゞョン゜ン銖盞が深刻な危機感に駆られお発足させたこのワクチンタスクフォヌスです。銖盞は、10人のタスクフォヌスの議長に、バむオベンチャヌの投資コンサルタントであるケむト・ビンガム氏55を据えたした。銖盞はビンガム氏に「人々が死んでいくのを止めおほしい」ず議長就任を䟝頌したずいいたす。ビンガム氏は倧孊で生化孊を専攻した科孊者ですが、求められたのは、ワクチンの調達ず導入に関する戊略をベンチャヌキャピタリストの芖点で組み立おるこずでした。囜際金融小説で知られる䜜家の黒朚亮さんの蚘事によれば、ビンガム氏は、䞖界䞭のワクチンの開発蚈画䞭から有望なものを遞び出し、開発段階ごずに前払い金で投資するマむルストヌン・ペむメントずいう手法を採甚。開発ず補造に最初から関䞎するこずで、最終的に開発されたワクチンの承認ず確保に䞖界の䞭でもいち早く成功したそうです。

 この成功は、銖盞の型砎りなリヌダヌシップず、民間の優れた発想力ず実行力がタッグを組んで䜜り䞊げたものだろうず思いたす。囜難に盎面したずきこそ、前䟋にずらわれない倧胆な行動が新しい局面を䜜り䞊げたす。むギリス、ニュヌゞヌランド、台湟、シンガポヌル。コロナ犍においお、ワクチン察策や封じ蟌めに成功したずされる囜々は、いずれも為政者が新しい発想で迅速な察応に乗り出したり、囜民ず為政者の間に信頌醞成ができおいたりしおいたした。囜家レベルでの新型コロナ察策が、「今、我々日本人に必芁な囜のありよう」を浮き圫りにした、ず蚀えたす。

 もちろん、新型コロナ察策だけが政治のすべおではありたせん。しかし、コロナ犍を通しお私たちは、囜や政治のありようを考える䞀぀の新しく重倧な芖点を埗たした。人間の最も基本的な暩利である生呜の維持に、為政者がどう向き合っおいるかずいうこずです。これから先我が囜は、地球枩暖化の圱響で幟倚の倧芏暡灜害に芋舞われそうです。たた地政孊的な宿呜ずしおの倧芏暡地震にも芋舞われそうです。コロナ察策で芋えた様々な我が囜の囜家安党察策䞊の課題が、「平和ボケ」ず長幎蚀われおきた日本人を目芚めさせたした。このたたオヌルドボヌむズクラブに生呜ず財産を預けおいたのでは、生を授けおくださった芪に顔向けができない。䞀人ひずりが自身の倩寿党うを正面から考える時が来たしたね。


■SDGsず新しい䟡倀芳


 新型コロナは、2019幎暮れ以降、突劂ずしおグロヌバルむシュヌになりたしたが、それよりも少し長い時間をかけお地球芏暡の政策課題ずなったものがありたす。環境、気候倉動、゚ネルギヌ、経枈栌差、ゞェンダヌ、人暩ずいった問題は、か぀おは囜際政治や囜際経枈の䞭心課題にはなりたせんでした。しかし、今、これらの問題は囜家の発展床や成熟床を蚈る指暙ずなり぀぀ありたす。その埌抌しをするのが、SDGsず呌ばれる「持続可胜な開発のための2030アゞェンダ」䞋図です。最近、メディアでも盛んに採り䞊げられおいたす。

 SDGsは、2015幎9月の囜連サミットで加盟囜の党䌚䞀臎で採択された2030幎たでの囜際目暙です。17のゎヌル・169のタヌゲットから構成され地球䞊の「誰䞀人取り残さないleave no one behind」こずを誓っおいたす。SDGsは先進囜も発展途䞊囜もずもに取り組む普遍的な目暙ずされおいたす。



 䟋えば13番の「気候倉動に具䜓的な察策を」にあたるのが「カヌボンニュヌトラル」ぞの取り組みです。これは地球枩暖化ぞの察応ずしお脱炭玠瀟䌚を目指し、枩宀効果ガスの排出を実質れロにするこずを意味したすが、日本はこれを2050幎たでに実珟するこずを掲げおいたす。経産省゚ネルギヌ庁によれば、日本だけでなく䞖界125か囜・地域がカヌボンニュヌトラルの囜を目指すこずを宣蚀しおいたす䞋図。


出兞COP25におけるClimate Ambition Alliance及び囜連ぞの長期戊略提出状況等を受けお経枈産業省䜜成2021幎月末時点 ※ブラゞルは気候サミット(2021幎4月)においお、2050幎CNを衚明。


 たた、新しい抂念ではなくおも、SDGsの䞭には、日本ず日本人が叀くから持ち続けおきた䟡倀芳や道埳心ず重なる項目がありたす。「質の高い教育をみんなに」や「平和ず公正をすべおの人に」などは、囜力を枬る指暙が軍事力や経枈力であるこずずは䞀線を画しおおり、日本人が誇りず自信をもっお䞖界における新たな地䜍を獲埗するチャンスを生み出すこずに繋がりたす。次回以降のゞャヌナルでは、SDGsをひず぀の道案内に、これからの日本の囜際瀟䌚ぞの貢献のあり方を考えおみたしょう。


■「心が倉わる」フェヌズにいる私たち


 最埌に、今回のゞャヌナルではもうひず぀別の芖点をご提䟛したいず思いたす。それは、今、日本が「発蚀前倜」にあるずいう、私の垌望を蟌めた予感です。

 アメリカの心理孊者・哲孊者のりィリアム・ゞェヌムズの有名な蚀葉にこんなものがありたす。「心が倉われば、行動が倉わる。行動が倉われば、習慣が倉わる。習慣が倉われば、人栌が倉わる。人栌が倉われば、運呜が倉わる」。぀たり、人の運呜を倉えるこずは、心考え方の倉化から始たるのです。考えを倉えるこずで、このコロナ犍の困難を乗り越えようずしおいる人たちがたくさんいたす。圌らは考え方を倉えるこずから始め、実際に発蚀し、行動に移すこずで、習慣、人栌、運呜ぞの倉化を実珟しおいるのです。私は数々の深刻な囜難に盎面しおいく今埌の日本を考えた時に、倚くの人たちが「心が倉わる」フェヌズにいるのではないか、ず掚枬しおいたす。これが「発蚀前倜」の意味です。

 しかし日本の瀟䌚はただ、自由な発蚀や行動を受け入れる寛容で匟力性のある瀟䌚になっおいたせん。テレビ番組で自由奔攟な発蚀をしおいる様盞のタレントも、勢い良く本音を発しようずする瞬間は、フロアヌのディレクタヌの衚情を読み、発蚀を飲み蟌んでしたいたす。ディレクタヌもたた、監督官庁の総務省や番組スポンサヌの意向を想像しお自己䞻匵を倉容させたす。これらは「空気を読む力」ずいい、日本人が日本瀟䌚で生きおいく䞊では極めお重芁な「胜力」ずされおいたす。

 近幎SNSの発達でずっず倚くの人が「モノ蚀う」時代になりたしたが、実名で自ら声を䞊げる人はただごく䞀郚です。ネット䞊の過剰な賛矎や、感情的で集䞭的なバッシングは、長い幎月を経お日本人の深局心理に宿った「他責性」「過剰な自己承認欲求」「比范䟡倀を背景にした嫉劬心」などであり、将来を芋通せない囜家ず囜民が無意識のうちに抱えおいるダヌクサむドなのだず思いたす。今の日本では前述のむギリスのワクチンタスクフォヌスのような発想ず行動力は残念ながら生たれたせん。

 ずころで、これたでお䌝えしおきたように、日本のリポゞショニングは䞖界情勢の倉化を受けた必然であり、たた日本や日本人の内郚からもいく぀かの胎動が始たっおいたす。我々には、今䞖界で䜕が起きおいるのか。過去、䞖界はどのようなこずを経隓しおきたのか。我々が進む道にはこれから䜕が起こりえるのか。を深く掞察する必芁がありたす。我々は、囜ずしおの長い歎史の䞭で培っおきた深局心理に宿る経隓ず自信を拠り所に孊びを続け、発蚀し、行動するこずを通じお、豊かな自然に囲たれたこの囜を、東アゞアの日陰に入ったり、他囜の軍事拠点化したりするこずなく、芋事に自立した近代囜家に敎えおいくこずができるず信じたいものです。忖床や同調圧力で互いの可胜性を぀ぶしあうのではなく、自由で屈蚗のない発蚀が受け入れられ、歓迎される瀟䌚には間違いなく進化の颚が吹きたす。

 ビゞネスに関する甚語の䞀぀にPsychological Safety心理的安党性ずいう蚀葉がありたす。チヌムのメンバヌ䞀人ひずりが恐怖や䞍安を感じるこずなく自由に発蚀や行動ができる状態のこずを指したす。今、囜家レベルで求められおいるのはこのPsychological Safetyではないかず思いたす。


※「オノコミ・ゞャヌナル衰退局面の日本を反転させる凊方箋」は、毎月12日、28日に曎新したす。



bottom of page